本研究では球磨川水系河口域の潮間帯に設定した 94 定点に基づき,2012 年から 2020 年にかけての 9 年間における出水と底生生物の出現パターンの関係を解析した.底質の変化を評価した結果,シルトと粘土の割合が調査期間の中期から終期にかけて増加し,特に令和 2 年 7 月豪雨後の調査で特に高かった.つまり,調査期間中に潮間帯は細粒化が進行したと示唆される.底生生物の α多様性は大規模な出水が発生した年で低い値を示し,γ多様性は出水の規模と有意な負の相関を示したことから,底生生物の多様性は河川の出水に応答し,特に大規模な出水が発生した際に低下しやすいことが示唆された.加えて,底生生物 55 種の出現パターンの変動を評価した.その結果,出現パターンは 5 タイプに区別され,このうち,対象種の約 4 割に該当する 20 種が属したタイプは,年最大出水に対して有意な負の相関を有した.これら 20 種の特徴は,アナジャコ,ヨコヤアナジャコ,ニホンスナモグリ,およびこれらの巣穴を利用する共生種に加え,砂礫底や砂底を生息場とする種が主であった.加えて,調査期間中に単調的に出現数が減少したタイプも認められ,このタイプに属した 6 種のうち 4 種は主に砂底を生息場とする底生生物であった.これらの結果から,大規模な出水と経年的な底質の泥質化によって,砂質潮間帯生息場の減少と本生息場に依存する底生生物の減少が示唆される.今後,本水系で大規模な出水が発生した際には,砂底を生息場とする底生生物の生息状況をモニタリングし,その結果に応じた底質の改善を検討すべきである.
Koyama et al. (Thu,) studied this question.