ヒノキの天然林は, 過去の人為撹乱の影響により日本の多くの地域で断片化が進んでいる。また,ヒノキは天然更新が難しく,特に温暖な地域で更新しにくいことが指摘されている。樹木の天然更新にはまず充実種子が十分に供給される必要がある。そこで,本研究では天然林におけるヒノキの充実種子の供給量の年変動とその要因を明らかにすることを目的として,気候の異なる2地域(高知県,長野県)の林分で,それぞれ26年間および8年間にわたり,落下種子数と充実率の年変動,カメムシ類と種子寄生蜂によるヒノキ種子の散布前捕食の状況を調べた。シードトラップを用いて落下種子数を観測し,軟x線写真による充実種子および寄生蜂幼虫穿入種子の判別と,染色と実体顕微鏡観察を用いたカメムシ類の吸汁痕の確認を行った。その結果,ヒノキの種子生産量には両地域とも著しい年変動があり,また,温暖な高知県の林分では,冷涼な長野県の林分に比べて充実率が低い傾向がみられた。高知県の天然林のヒノキ種子はカメムシ類による吸汁の影響を強く受けており,捕食者飽食効果によって多数の充実種子が供給されるのは,10年に1度程度の大豊作年に限られることが明らかになった。
Noguchi et al. (Thu,) studied this question.