本稿では,神経系を個々の構成要素へと分解して理解するのではなく,要素間の相互作用を含む 「総体としての神経機能特性」のメカニズムを明らかにしようとするシステム神経科学について,主要なアプローチの利点と限界を,筆者の視点から概説する.まず,計測と解釈を中心とした 伝統的アプローチがもたらした成果と残された課題を整理する.次に,この課題を克服するために 過去15年あまり進展してきた大量計測・定量評価の手法を取り上げ,その一方でこれらの手法では 神経活動と機能との因果関係を原理的に同定しにくいという問題が残ることを指摘する.最後に,この因果性の問題に対処しうる新たな方向性として,神経活動を「再構成」することで 神経システムの動作原理を理解しようとするアプローチを議論する.この,いわば構成論的神経科学には大きく二つの戦略がある.すなわち,(1)既存の神経系を 人工物で置き換える試みと,(2)既存の神経系を操作することでその機能原理を明らかにする 試みである.本稿では,これら二つのアプローチの現状と可能性を検討する.
Daisuke Shimaoka (Thu,) studied this question.