牛の手根ハイグローマは手根関節にみられる疾患で,成雌に好発する一方,跛行などの臨床症状を呈さない場合,臨床現場において治療対象とならない.しかし,ハイグローマ罹患牛では経済的損失を生じることが知られており,積極的に早期治療を行うべき疾患であると考えられる.手根ハイグローマの治療としては内部に貯留した浸出液の排除が主であるが,治癒までに長期間を要する.一方,慢性,重篤化したハイグローマを外科的摘出することにより治癒した例が報告されており,外科的摘出の有用性が期待される.しかし,手根ハイグローマに対し早期に外科的摘出を試みた報告はなく,特に発症の少ない子牛での治療効果は不明である.我々は非典型的な手根ハイグローマに罹患した2カ月齢の黒毛和種雄牛に対し,外科的摘出を実施して良好な長期的予後を得た.症例牛は右手根関節の腫脹を主訴に受診した.超音波検査の結果,腫脹部の皮下に独立した可動性のある2つの嚢胞が確認された.嚢胞切開による貯留液の排出を行った.嚢胞内に貯留していた漿液からはStaphylococcus aureus(SA) が検出された.その後,抗生剤,消炎剤の投与による治療を行ったが腫脹が改善せず,第8病日に滑液嚢胞摘出術を行った.摘出した嚢胞を病理組織学的検査に供した結果,化膿性炎症像を伴う手根ハイグローマと診断された.本症例では子牛での発症,患部に2つの嚢胞が形成されていた点から典型的なハイグローマとは異なっていた.また,その発症機序については従来から報告されている患部の持続的圧迫に加え,関節周囲炎の影響の可能性が示唆された.術後,感染や再腫脹を起こすことなく治癒し,第17病日に退院した.退院後も手根関節腫脹の再発は無く順調に発育し,10カ月齢で市場に上場された際には他の牛と同程度の体重で取引された.従来,治癒までに2カ月以上を要する手根ハイグローマに対し,摘出手術を実施した本症例では17日間で治癒したことから,黒毛和種子牛の手根ハイグローマの治療法として,外科的摘出が有効であると示された.
Yamane et al. (Wed,) studied this question.