間葉系幹細胞(MSC)はその微小環境からの生物物理的シグナルを感知し、細胞骨格の組織化および機械伝達因子であるイエス関連タンパク質(YAP)の核-細胞質分布を制御することで細胞の挙動を形成する。非生理的に硬い基材上での長期のin vitro培養は持続的な核内YAP局在を誘導し、これは機械的記憶と呼ばれる現象である。そこで、ヒト骨髄由来MSCにおいて一過性のエピジェネティック修飾がYAPの細胞内局在に影響を与えるか検討した。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である5-アザシチジン(5-Aza)処理は、MSCにおいて多能性マーカー発現や神経分化能の明らかな変化を伴わずにYAPの局在を細胞質側へシフトさせた。RNAシーケンシングにより5-Aza処理後には細胞外マトリックス(ECM)関連遺伝子の広範な発現抑制が明らかになった。独立してTGF-βシグナルを介したECM産生抑制も同様に細胞質側へのYAP局在化を促進した。さらに、5-Aza処理MSCを軟基材に移した際には、硬い表面での増殖後でもYAPの再局在化が回復した。これらの結果は、一過性の5-Aza処理が機械的記憶に関連した機械的刺激によるYAP制御を部分的に緩和できる可能性を示唆する。したがって、5-Azaの簡単かつ一過性の投与は、細胞療法用のMSCのex vivo増幅中の品質改善に有用な手段となりうる。
高山ら(Mon,)がこの問題を検討した。