これまで酒類と食との相性について語られる中で,魚料理と共に飲む酒の種類によっては生臭さが感じられるが,清酒ではその生臭さが少なく,食との相性が良いことが報告されていた。本研究では,まず官能評価にてビールとスルメを食べ合わせた際には魚由来の金属臭が感じられるが,清酒とスルメを食べ合わせた際にはその金属臭が低いことを確認した。その金属臭への寄与物質は既報の(Z)-1,5-octadien-3-oneであることを確認した。そして,酒類中に1 ng/L(ppt)以下で含まれる(Z)-1,5-octadien-3-oneの定量方法について検討し,SBSE法を用いた抽出,PFBOAによる誘導体化,NCIによるイオン化,GC/MS/MSを用いた分析を組み合わせることによって極めて高感度の,省力化された定量方法を確立した。そしてビール10点,清酒7点とスルメを混合した際の(Z)-1,5-octadien-3-oneの生成量を測定した結果,清酒中ではスルメと混合しても(Z)-1,5-octadien-3-oneの生成量が低く,清酒7点中での生成量平均値は,ビール10点中での生成量平均値に比べて7.1倍低い値であった。このようにしてビールと比較して清酒中では,魚の生臭さの要因の一つともされる「金属臭」の生成が低いということを初めて示し,「食との相性」の一端を物質の観点から示すことができた。今後,他の飲料と魚介料理の組合せによって生成する(Z)-1,5-octadien-3-oneの濃度測定を進め,金属臭を生成しない飲料の製造方法の検討へと繋げていく。
Kishimoto et al. (Mon,) studied this question.