細胞自律的な概日時計は,生物が日々の環境変化に適応し,生理機能のタイミングを最適化するために不可欠なシステムである.しかし,光,温度,薬剤など,性質の異なる多様な時計同調因子が,どのような共通の初期シグナル伝達経路を経て分子時計の位相を制御・同期させているのか,その実体は長らく未解明であった.本研究では,NIH-3T3線維芽細胞を用いて,中核時計タンパク質であるBMAL1およびCLOCKの細胞内局在変化のダイナミクスに着目し,その挙動と時計の同期現象との関連を詳細に解析した.その結果,多様な時計リセット処置を行った直後に,BMAL1が細胞質から核内へと急速かつ同期的に蓄積する現象を見出し,我々はこの現象を「即時同期応答(immediate synchronization response:ISR)」と命名した.このBMAL1の核内移行に伴い,CLOCKタンパク質の蓄積も確認され,同様のISR現象はC6グリオーマなど他の齧歯類時計モデル細胞においても認められた.分子機構の解析により,刺激直後にカゼインキナーゼ2(CK2)によるBMAL1のSer90リン酸化レベルが上昇することが明らかになった.このリン酸化はBMAL1の核内蓄積を促進することが知られている.この因果関係を裏付けるように,薬理学的にCK2活性を阻害した実験では,時計のリセットに伴うPer2遺伝子の急激な発現上昇,および時計のリセットそのものが部分的に抑制された.さらに,数理シミュレーションにおいても,BMAL1のリン酸化レベル上昇とそれに続く核局在化が,時計振動システムの位相変化を起こす駆動力となり得ることが支持された.結論として,本研究は,BMAL1-ISRが外部からの多様な同期シグナルを統合し,分子時計の振動システムへとリンクさせる重要な「スイッチングシグナル」として機能していることを示唆するものである.
Tamaru et al. (Tue,) studied this question.