細胞内のオルガネラは独立して働くのではなく,膜融合を伴わずに近接して情報や物質をやり取りする「オルガネラ接触場」を介して協調している.なかでもミトコンドリアと小胞体の接触領域(MERCs)は,カルシウムや脂質の輸送場にとどまらず,ミトコンドリア動態,オートファジー,ストレス応答,細胞死,代謝調節など多面的な現象に関与する制御ハブとして理解が進んできた.本稿では,まずMERCs形成の分子機構を「繋留」「物質の受け渡し」「接触場の調節」という観点から整理し,接触場が固定された構造ではなく状況に応じて再編成される機能領域である点を紹介する.次に筆者らの研究として,ミトコンドリア外膜のE3ユビキチンリガーゼMITOL(別名:MARCHF5)が接触場で基質の活性を選択的に制御し得ること,さらにヘム分解酵素HMOX2の制御を介してミトコンドリアへの鉄供給と呼吸維持に関わる可能性を紹介する.また,MERCsは動的に変化するため,生細胞での定量が不可欠である.分割型ルシフェラーゼを用いたミトコンドリア–小胞体接触の可逆的リアルタイム測定系(MERBiT)を紹介し,この系によりミトコンドリアROSに応答して接触が増加すること,さらにその接触増加が脂質ラジカルの処理に結びつくという新しい接触の生理的意義が明らかになってきたことを述べる.最後に,電子顕微鏡・超解像顕微鏡・近接センサー・近接標識など現在の主要な測定技術について概説する.
Isshin Shiiba (Tue,) studied this question.