本誌36巻9号421~427ページの研究報告 1を拝読した。迅速抗原検査の新たな有用性を示す貴重な症例報告であり,本法の適応取得と保険収載の必要性を改めて認識させられた。 Type II壊死性軟部組織感染症(necrotizing soft tissue infection: NSTI)は,A群β溶連菌(以下,GAS)のみならず,B群,C群,G群溶連菌によっても起こりうることが知られている。Tsugeら 2は,GASによるNSTIにおいても迅速抗原検査が偽陰性となりうることを報告し,検査結果に依存した判断が診断や外科的介入の遅れにつながる危険性を指摘している。そのため,GAS迅速抗原検査が陽性の場合には緊急デブリードマンを行う根拠となる一方で,陰性であっても臨床所見に基づき適切に外科的介入を行う必要がある。これまでGAS迅速抗原検査は,主として早期の病原生物特定を目的とした補助的検査として位置づけられてきた。術中迅速診断においては1984年 3以降,凍結切片を用いた報告もあるが,近年の報告では,凍結切片における“壊死+好中球多数”の所見で感度73%・特異度68%,細菌の観察を加えると感度32%・特異度91%にとどまり,偽陰性も19%に認められるなど,単独での臨床的有用性は限定的との報告 4がある。今回の池田らの報告 1は,迅速抗原検査により,いわゆる病変の「断端」を判定し,デブリードマンの追加の要否が判断できるというものであった。GASによるNSTIにおける初回デブリードマン範囲の判断において,GAS迅速抗原検査を用いてデブリードマン範囲を客観的に決定するための指標として応用し,それにより良好な結果を得たという意味で,迅速抗原検査に新たな用途を見いだした意義深い報告と考える。 池田ら 1が考察で述べているとおり,GAS迅速抗原検査は咽頭拭い液中のGAS抗原の検出が使用目的として承認された体外診断用医薬品であり,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)上,NSTIには適応はなく,保険請求も認められていない。キットを臨床現場において正式に使用するには,院内倫理委員会の承認を要するため,コストの問題も含め導入のハードルは依然として高い。 GASによる壊死性筋膜炎に対して咽頭用の迅速診断キットを用いて診断補助とした症例が1996年に報告 5されて以降,国内外で複数の有用性を報告する文献が発表されているが,30年が経過した現在でも日本で利用が進まないのは,一つには,これまで迅速抗原検査の意義が診断にとどまり,実際の外科手術の内容に具体的に影響することが少なかったこと,もう一つが日本において適応が認められていなかったことが挙げられる。新たな迅速抗原検査の意義が示唆された今,本学会主導研究を開始するなどの多施設共同研究を行い症例を重ねて,GAS迅速抗原検査の適応取得と保険収載の実現が望まれる。それにより本法の可能性がさらに広がり,NSTI治療の質の向上と,予後改善につながることが期待される。 著者注:本文中,日本医学会医学用語辞典に従い,debridementを「デブリードマン」と記載したが,掲載論文のタイトルについては,原著のまま「デブリドマン」としている。 本論文に関する利益相反はない。
將人 et al. (Sun,) studied this question.
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