稚貝の新規加入の失敗はイシガイ目の減少の主要なプロセスの一つである.その主な原因として分断化と生息環境の質の劣化が指摘されてきた.前者は主に幼生期の宿主―寄生関係を阻害するが,後者は複数の生活史段階に負の影響を及ぼすことで新規加入を失敗させ得る.しかし,生息環境の質の劣化によるイシガイ目の新規加入の失敗と生活史段階の関係に関する理解は乏しい.本論では,イシガイ目の減少の主要な劣化要因である水質および底質の汚染(まとめて汚染と呼ぶ)に着目し,新規加入失敗と生活史段階の関係について整理することで,イシガイ目の保全に資する情報を提供することを目的とした.イシガイ目は成貝期,幼生期,稚貝期の 3 つの主要な生活史段階の一つあるいは複数が制限を受けることで新規加入が失敗する.これまで,これらの生活史段階の一部,あるいは 3 つの包括的な評価により,汚染による新規加入の制限段階が特定されてきた.これまでに,幼生期と稚貝期が主な制限段階になる事例が複数報告され,中でも稚貝期が汚染に脆弱であることが認識されてきている.最近では,主要な生活史段階の包括的な評価による制限段階の特定に加え,汚染要因の複合ストレス機構が新規加入に与える影響も検証されている.Miura et al. (2023)の事例では,幼生期と稚貝期が同時に制限段階となること,2 つの汚染要因の複合ストレス機構が働くことで,稚貝期の生残率が相乗的に低下することを示した.これらの事例を踏まえると,イシガイ目の保全において,新規加入の制限段階を特定することに加え,汚染を含めたストレス要因の複合ストレス機構の有無に配慮する必要が強調された.今後の研究課題として 1)複合ストレス機構が主要な生活史段階に与える影響の更なる検証と,2)評価が不十分な地域,種における個体群現況の把握と継続的なモニタリングの実施が必要と考える.
Kazuki Miura (2026) studied this question.