水素脆性は水素が関与した破壊現象である.破壊機構 解明の鍵はミクロ的なレベルにまで立ち入って割れがど こで,どのように発生し,成長するのかであり,水素脆 性では水素がそこでどのように関わっているのかを明ら かにしなくてはならない.今までに述べてきたように, 材料中の水素の大部分はいろいろな欠陥にトラップされ ている.したがって,一口に材料中の水素といっても水 素はいろいろな状態にあり,脆化に主要な役割を果たす 状態のものがあるはずである.一方,いろいろな格子欠 陥は破壊の進行におけるクラックやボイドの生成,成長 に重要な役割を果たす.完全結晶の試料でも変形中に転 位やそれに付随する欠陥を生成する. 水素の存在状態の解析は水素そのものと同時に,水素 と格子欠陥との結びつきから水素が関わる欠陥の解析と いう意義を持つことに留意しなくてはならない.水素脆 性を破壊現象として捉えれば,その機構解明のためには 水素と相互作用を持つ欠陥と脆化特性との関係を明らか にすることが不可欠である.従来は試料中の水素量が検 討対象になっていることが多いが,水素自体の量や存在 箇所だけではなく,水素をトラップしている欠陥の種類 や欠陥密度が破壊現象としては意味を持つことを強調し たい.このことは破壊現象としては当然であるにもかか わらず,水素脆性の研究で従来見落とされがちな観点で あった. 水素の存在状態の検出には 2つの課題がある.1つは 微視組織や格子欠陥と関連する水素の局所的な分布を検 出することであり,第 2は水素のエネルギー状態の解析 である.水素はもっとも軽元素であり,存在量も微量な ことが多いために一般に直接的な検出は難しい.プロト ンの磁気モーメントとの相互作用を利用した中性子線回 折法や核反応を利用したイオンビームチャネリング法が 水素の位置決定に用いられるが,適用出来る場合は限ら れていて,水素がトラップされている微視組織との対応 づけは出来ていない. 前章で水素透過における拡散挙動を介してなど,水素 といろいろな格子欠陥との結合エネルギーを求めること を述べた.水素透過特性も水素の状態分析のひとつの手 法であるが,ここでは最近よく使われている可視化手法 と昇温分析法をまとめておく.
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Michihiko Nagumo (2006) studied this question.
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