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*Correspondingauthor(責任著者) E-mail:syoshida@oita-nhs.ac.jp,Tel:097-586-4431 受付:2021年5月25日(Received:25May2021) 受理:2021年6月10日(Accepted:10June2021) や虚血性心疾患による死亡リスクを上昇させること, 妊娠中の喫煙により,低出生体重児の増加,周産期 死亡や早期新生児死亡の危険性が高くなることなど, 非喫煙者への健康影響は公衆衛生上の大きな問題と なっている 2-5)。このようなことから,燃焼式たばこ 製品の有害性を低減する目的で新型たばこの一つと して,加熱式たばこが開発されてきた。実際,発が ん物質のベンゾ[a]ピレンやたばこ特異的ニトロソ アミン類,燃焼により生じる一酸化炭素など燃焼式 たばこで発生する数多くの物質の発生量が低減して いることが明らかにされている 6,7)。このため,たば こ製品製造企業は加熱式たばこをリスク低減製品で あるという立場で製造販売している 8-10)。一方,ニコ チンやカルボニル化合物のように燃焼式たばこ製品 と加熱式たばこ製品の発生量は同程度と低減しない 物質もある。さらに,含酸素有機化合物(2-フランメ タノールやジブチルヒドロキシトルエンなど),ポ リピレングリコールなど燃焼式たばこ製品と比較す ると加熱式たばこ製品において発生量が多いものも 明らかにされている 11,12)。このように,燃焼式たば こ製品と加熱式たばこ製品から発生する化学物質の 組成が異なっており,これに伴う加熱式たばこ製品 による生体影響も燃焼式たばこ製品と異なることが 考えられる。加熱式たばこ製品は燃焼式たばこ製品 と比較して発生量が低減される物質,同程度の発生 量の物質および発生量が増加する(あるいは新たに 加わる)物質が混在している製品であると言える。 このような中,たばこ製品製造企業大手のフィリッ プモリスジャパンは2021年5月に今後10年以内に燃 焼式たばこの発売から撤退することを表明した 13)。 今後使用量が増加することが想定される加熱式たば こ製品による健康影響について評価を行う必要があ るが,このような研究はほとんど行われていない。 このように加熱式たばこによる健康影響・生体影 響に関する報告が十分あるとは言えない状況ではあ るが,本稿ではこれまでに明らかにされている加熱 式たばこ製品による生体影響評価の実施状況とヒト で生じる健康影響や症例報告等,あるいは実験動物 等に対する影響に関する研究報告から,現在まで明 らかにされている加熱式たばこ製品による健康影響 について概説する。 2.加熱式たばこによる健康影響に関する研究状況 加熱式たばこによる健康影響に関する研究は, 1990年のRJレイノルズタバコカンパニーから報告 された論文 14)など,主にたばこ製品製造企業からの 研究報告が主であった。 1990年から2013年まで PubMedで加熱式たばこをキーワードに検索可能な 論文(検索式:((tobaccoheatingproducts)OR(heated tobaccoproducts))OR(heat-not-burntobacco))は年間 最大18報で平均5.7報であった(図1)。現在利用が進 んでいるIQOSが2014年に,glo,Ploom TECHが2016 年に発売されたこともあり,2014年以降は年々増加 傾向であり,2020年には172報となった(2021年は5月 現在65報)。しかし,この論文数に含まれる健康影 響,生物影響に関する論文は少ないのが現状である。 0 50 100 ᐕ ⺰ ᢥ ᢙ 図1 加熱式たばこを扱ったPubMed掲載論文数の推移 ■:2013年までの論文 □:2014年以降の論文 2013年以前は年間20報以下であったが,2014年以降は急増している。 2020年は172報,2021年は約4ヶ月間で65報掲載されている。 Vol.24No.2 表1 加熱式たばこ等による健康影響に関する論文数と総論文数に占める割合 | | 総論文数 | 発がん | 呼吸 器系 | 循環 器系 | 免疫系 | 雄性 生殖系 | 胎児期 曝露影響 | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 燃焼式 たばこ | 84,711 (100%) | 18,429 (21.8%) | 7,120 (8.4%) | 2,782 (3.3%) | 4,845 (5.7%) | 528 (0.6%) | 4,022 (4.7%) | | 電子 たばこ | 10,086 (100%) | 1,819 (18.0%) | 737 (7.3%) | 248 (2.5%) | 442 (4.4%) | 44 (0.4%) | 356 (3.5%) | | 加熱式 たばこ | 715 (100%) | 132 (18.5%) | 71 (9.9%) | 29 (4.1%) | 25 (3.5%) | 1 (0.1%) | 9 (1.3%) | | PubMedでヒットする論文数 (各たばこに関する論文に対するそれぞれの健康影響指標に関する論文の割合:%) 検索日:2021年5月3日 | | | | | | | | 表1にPubMedで検索された燃焼式たばこ,電子た ばこおよび加熱式たばこに関する研究論文の概要を 示したが,加熱式たばこに関する論文は燃焼式たば この0.8%,電子たばこの7%程度となっている。こ れは,世界的にみると,日本は加熱式たばこの普及 が進んでいるが 15),海外では電子たばこの普及が高 いため 16),電子たばこによる健康影響に関する研究 が精力的に行われている一方,加熱式たばこによる 健康影響に関しては研究が進んでいないと考えられ る。各種たばこの論文全体に占める健康影響として 発がん,呼吸器系疾患,循環器疾患,免疫・アレル ギー系疾患の論文割合は,3種類のたばこの間では 大きな違いは認められない。加熱式たばこによる各 種健康影響についての詳細は各項目で概説するが, 燃焼式たばこや電子たばこの論文数と比較すると加 熱式たばこの論文数自体が少ないことから,健康影 響評価について十分に議論されているとは言えない 現状にあるといえる。 系への影響を評価した。気道及び肺の抵抗性,肺の 弾性は燃焼式たばこの曝露により有意に低下したが, 加熱式たばこではこれらの変化は認められなかっ た 18)。PMIのWong等はラットに90日間加熱式たばこ あるいは燃焼式たばこを曝露し,呼吸機能への影響 を評価した。その結果,燃焼式たばこでは呼吸機能 が有意に低下したが,加熱式たばこではほとんど影 響を認めなかった 19)。Moazed等はWong等が行った 研究を再解析したところ,燃焼式たばこによる影響 と比較すると影響は小さいものの,加熱式たばこの 曝露により,呼吸器上皮の過形成および変性が認め られたことから,炎症性の障害が生じていることを 明らかにした 20)。Pataka等は50名のボランティア(25 名の男性喫煙者と25名の男性非喫煙者)に加熱式た ばこの喫煙直後,呼吸機能にどの様な変化が生じる か評価した。その結果,加熱式たばこの使用により 動脈血酸素飽和度,最大呼気速度等が有意に低下し, 非喫煙者,喫煙者ともに同様の変化が認められた 21)。 また,Tajiri等は燃焼式たばこから加熱式たばこに切 り替えた女性に急性好酸球性肺炎が発症し,加熱式 たばこの使用が原因であると報告している 22)。 加熱式たばこおよび燃焼式たばこによる呼吸器系 の細胞への影響について,いくつかの研究が行われ ている。Leigh等はヒト気管支上皮細胞(H292)に加 熱式たばこおよび燃焼式たばこの主流煙を曝露し, 細胞毒性,炎症性サイトカイン産生量を比較評価し たところ,加熱式たばこの曝露により,細胞毒性は 認められたが,その程度は,燃焼式たばこと比較す ると軽微であり,燃焼式たばこで生じた炎症性サイ トカイン産生誘導は加熱式たばこでは認められなかっ たことを明らかにした 23)。Davis等はヒト気管支上皮 細胞株(BEAS-2B),ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞 3.呼吸器系への影響 フィリップモリスインターナショナル(PMI)の Kogel等は燃焼式たばこと加熱式たばこを雌性ラッ トに1日6時間,28日間連続で曝露し呼吸器系への影 響を評価した。その結果,燃焼式たばこでは呼吸回 数,毎分呼吸量,最大呼気流量,一回換気量は低下 した。吸入ニコチン量が同程度の条件で曝露を行っ た加熱式たばこでは,毎分呼吸量,最大呼気流量で のみ有意な低下が認められた。加熱式たばこで認め られた影響は,ニコチン量で調整すると約3分の1の 燃焼式たばこの曝露により生じることも示した 17)。 PMIのPhillips等は燃焼式たばこと加熱式たばこをマ ウスに1日4時間,週5日,最大7ヶ月間曝露し呼吸器 室内環境[2021] (A549),マウス形質転換線維芽細胞(NIH/3T3)等の8 種類の細胞に加熱式たばこと燃焼式たばこの曝露を 行い,細胞死,細胞膜障害,ミトコンドリア活性の それぞれを指標とする3種類の細胞毒性試験を用い て評価した。その結果,細胞膜障害およびミトコン ドリア活性を指標とした場合,加熱式たばこ曝露に より細胞毒性が認める細胞があった一方,細胞死を 指標とした場合,8種類の細胞全てで細胞毒性は認 められなかった。また,NIH/3T3は3種類の評価系に おいて細胞毒性が認められなかった 24)。 このように,加熱式たばこによる呼吸器系への影 響は燃焼式たばこと比較すると小さいとする実験動 物を用いた研究による報告がある一方,ヒトでのボ ランティア実験により,加熱式たばこにより呼吸器 系に影響が生じることを示す知見も報告されている。 さらに培養細胞を用いた研究では,評価系によって, 影響の有無が異なること,評価対象とする細胞によっ て,影響が異なることも明らかになり,加熱式たば こによる影響評価をより詳細に行う必要があること を示している。 4.循環器系への影響 燃焼式たばこによる循環器系への影響として,動 脈硬化・冠状動脈疾患・脳卒中・腹部大動脈瘤など があげられる。Nabavizadeh等は加熱式たばこある いは燃焼式たばこをラットに吸入させ血管内皮機能 の尺度である血流依存性血管拡張反応への影響を検 討した。血流依存性血管拡張反応は動脈硬化に進展 する前段階,血管内皮細胞の機能障害の指標であり, 加熱式たばこの曝露により,燃焼式たばこと同程度 の変化が認められた。燃焼式たばこによる健康影響 の一つである動脈硬化は加熱式たばこでも燃焼式た ばこと同程度に生じる可能性が示唆された 25)。一方, PMIのPoussin等は各種たばこの主流煙を細胞に曝露 し,加熱式たばこによる血管内皮機能への影響は燃 焼式たばこよりも小さいことを報告している 26)。ま た,PMIのPhillips等は加熱式たばこ,燃焼式たばこ の主流煙によるアテローム性動脈硬化症に対する影 響を検討するため,アポリポプロテインE欠損マウ スを用いアテローム硬化性プラーク形成を評価した。 その結果,燃焼式たばこと比較して加熱式たばこで は影響が小さいと結論づけた。しかし,加熱式たば この曝露によりプラーク形成が生じたことも示して おり,加熱式たばこがアテローム性動脈硬化症に影 響を与える可能性を一部示している 27)。 このように,加熱式たばこによる循環器系への影 響は呼吸器系への影響同様,燃焼式たばこと比較す ると小さいとする研究による報告がある一方,加熱 式たばこによる影響は燃焼式たばこと同程度である という報告もあり,引き続き評価を詳細に行う必要 があることを示している。 5.免疫系への影響 日本たばこ産業のFujimoto等は加熱式たばこと燃 焼式たばこをラットに曝露し気道病理組織への影響 を評価したところ,燃焼式たばこで生じた肺炎など 気道組織の病変は加熱式たばこではその変化が小さ いものであることを示した 28)。PMIのTitz等はマウ スに18ヶ月間加熱式たばこあるいは燃焼式たばこを 曝露し気道組織の病理的変化,遺伝子発現変動など を検討した結果,肺の炎症,肺気腫変化を含む気道 の組織学的変化は認めたが,燃焼式たばこによる影 響と比較すると軽微であった。さらに,気道や肺の 遺伝子発現変動も,加熱式たばこによる影響は燃焼 式たばこによる影響より軽微であり,燃焼式たばこ は免疫応答を惹起するが,加熱式たばこではその影 響が小さいことを示した 29)。PMIのWong等はラット に90日間加熱式たばこあるいは燃焼式たばこを曝露 し,病理学的評価を行った。その結果,燃焼式たば こでは肺に炎症細胞の浸潤を認めた一方,加熱式た ばこではその影響が小さいことを示した 19)。一方, Moazed等はPMIが行ったラットに90日間加熱式たば こあるいは燃焼式たばこを曝露した研究を再解析し たところ,加熱式たばこの曝露により,好中球の増 加と胸腺萎縮が生じ,この影響は燃焼式たばこの曝 露による影響より大きいことを示し,加熱式たばこ は免疫調節作用を有することを明らかにした 20)。 加熱式たばこによる免疫系への影響は燃焼式たば こより小さいとする報告がある一方,評価指標によっ ては燃焼式たばこより強い影響が認められるという 報告もある。これは,燃焼式たばこの主流煙には含 まれない成分が加熱式たばこの主流煙に含まれてい ることに起因する可能性もあり,影響発生因子の解 明を含め,さらなる研究が必要であると言える。 6.妊娠中の曝露による出生後雄性生殖系への影響 妊娠中に燃焼式たばこを喫煙すると妊娠経過や出 生児に影響が生じることは数多く報告されている。 Vol.24No.2 C A B ኻᾖ⟲ 6 ྖ ( 1 0 ਫ਼ 10 * ( % ) ׄ ร ೖ ടᾲᑼ ⟲ߎ߫ߚ Ҳ 0 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を同様に母マウスに曝露し,出生した雄マウスの精 細管に変性は生じず,造精機能にも影響が認められ なかった 30)。これらのことから,燃焼式たばこでは 認められない生体影響が加熱式たばこにより生じる 可能性を示しており,従来の燃焼式たばこにより生 じる健康影響だけでなく,加熱式たばこ特有に生じ る健康影響についても検討していく必要を示してい る。また,妊娠マウスヘの加熱式たばこの曝露は, 妊娠期間中に1回20分間,2回のみであり,少ない曝 露量であったが,出生した雄マウスに影響が認めら れた。このことから,妊娠中に加熱式たばこを使用 することは機会喫煙であっても次世代に影響を与え る可能性があることを示している。 㘃࡞࠲ ԙ ㉄⚛ᯏൻว‛ ࡦࡇ[a[࠱ࡦࡌ ើ⊒ᕈᯏൻว
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Seiichi Yoshida (2021) studied this question.
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