目的:救急事案の多くは住宅で発生しており,救急隊は住宅といった狭隘な場所での活動を余儀なくされている.多くの救急隊員は傷病者の持ち上げと持ち下げを含むターポリン担架を用いた傷病者搬送時に身体的負担を感じており,特に腰部への負担が大きい現状が報告されている.しかし,救急隊員が実際に傷病者搬送時にどのような搬送方法を選択しているか,搬送方法ごとにどのような身体的負担を感じているかは明らかになっていない.一方,医療・福祉分野では,持ち上げを要しないNo Liftにより,腰部負担の軽減が図られており,一定の成果を挙げている.本邦においても,No Lift搬送が可能な搬送資器材であるエアストレッチャーを導入している消防本部も存在しているが,その導入効果は十分に検証されていない.これらのことから,本研究の目的は住宅といった屋内環境における救急活動中の傷病者の搬送方法と,それに伴う身体的負担の実態を明らかにし,傷病者搬送における課題を検討することとした.対象と方法:アンケート回答に同意を得た47都道府県の救急隊員1,152名を対象とし,Googleフォームを用いたオンライン無記名自己記入式アンケートを実施した.調査項目は,①回答者の属性,②徒手搬送やターポリン担架等の資器材といった搬送方法,③身体的負担(疲労度,腰部負担,実施の簡便さ),④搬送の実施状況,⑤搬送の安全性(身体的負担と安全性を検討する項目として,ヒヤリハット・事故の有無)の5領域で構成し,要解析項目を①各搬送方法の疲労度,②腰部への身体的負担を感じた者の割合,③搬送方法の実施の簡便さ,④ヒヤリハット・事故経験の有無の4項目とした.疲労度はNo Lift搬送が可能であるエアストレッチャーを対照として分析した.結果:多くの救急隊員が実施の簡便さに優れるターポリン担架といった傷病者の持ち上げや持ち下げが必要な資器材を使用している他,救急活動時に腰部に身体的負担を感じている現状や,ターポリン担架での搬送時にヒヤリハット・事故を経験している現状が明らかとなった.疲労度や腰部への負担では,エアストレッチャーを使用し,傷病者を持ち上げずに滑らせて搬送するNo Lift搬送の有効性を支持する結果を得たが,その普及率は2割程度と低かった.結論:救急現場での傷病者搬送は主にターポリン担架が選択されていた.ターポリン担架は実施の簡便さに優れるが,腰部への負担が大きく,ヒヤリハット・事故の危険性が高い傾向にあることが,データから示された.No Lift搬送は救急隊にとっても,疲労度および腰部への負担軽減に有効である可能性が示唆され,定年延長隊員や女性救急隊員の増加が予想される本邦の救急隊にとって,No Lift資器材に関する教育や施策への導入が求められる.
Egawa et al. (Thu,) studied this question.