The patient was a 58-year-old man diagnosed with nasopharyngeal carcinoma (T1N3M1, stage ⅣB). He re ceived 15 courses of pembrolizumab, an immune checkpoint inhibitor. Two months after treatment, he present ed to the emergency department with complaints of nausea, vomiting, and fatigue. A chest computed tomog raphy scan revealed pericardial effusion. The patient was hospitalized for suspected pericarditis or myocarditis due to immune-related adverse events (irAE), and was started on 60mg of prednisolone. However, six hours after admission, he exhibited symptoms of seizures and deterioration in cardiac function. Therefore, a steroid pulse with 1,000mg of methylprednisolone was administered for 3 days. Subsequently, the prednisolone dose was tapered from 60mg, and he was discharged on hospital day 22. Although the fatality rate for irAE myocar ditis is reported to be around 50%, in this case, early therapeutic intervention resulted in successful survival. Moreover, it has been reported that ICIs show higher antitumor efficacy in cases where irAE occurs. Also, in this case, both the primary and metastatic lesions have remained reduced in size. Key words:irAE, Immune checkpoint inhibitor, Myocarditis, Pembrolizumab [Received Oct. 5, 2024, Accepted Dec. 13, 2024] はじめに 近年,様々な癌種に対して免疫チェックポイント阻害 薬(immune checkpoint inhibitors:ICI)を用いることが 多くなっている。特に耳鼻科領域では,再発転移頭頸部癌 に対してニボルマブやペムブロリズマブが用いられる。一 方で,免疫チェックポイント阻害薬を用いることで免疫系 が活性化し,それによって炎症性の有害事象が生じるこ とを免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAE)と呼ぶ。今回,ペムブロリズマブを用いたことで irAE の心筋炎が生じた症例を経験したため報告する。 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室 [令和 6 年 10 月 5 日受付,令和 6 年 12 月 13 日受理] 別刷請求先: 〒 105-8461 東京都港区西新橋 3-25-8 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室 白 取 竣 20 頭頸部癌 51(1):19—23,2025 白 取 竣ほか: 症 例 症例:58 歳,男性。 主訴:食思不振,嘔吐,倦怠感,冷汗。 既往歴:肺気腫。 内服歴:なし。 生活歴:喫煙 40 本× 37 年,飲酒なし,Flusher。 現病歴:X-1 年 6 月,頸部リンパ節腫脹を主訴に当院紹 介受診された。上咽頭生検より,非角化型扁平上皮癌の病 理診断であり,PET-CT では両側頸部リンパ節及び仙骨に多 発集積を認め,上咽頭癌 cT1N3M1 Stage ⅣB の診断となっ た。X-1 年 9 月にペムブロリズマブ(200mg/body 3 週間毎) 投与を開始し,X-1 年 12 月の 5 コース目終了時までは PR (Partial Response)であった。しかし X 年 6 月の 13 コース 目施行後 SD(Stable Disease)となり,X年 8 月の 15 コース 目施行後には PD(Progressive Disease)となり,X 年 9 月 6 日にパクリタキセル(PTX 100mg/m 2 day 1,8),カルボプ ラチン(CBDCA AUC 2.5 day 1,8),セツキシマブ(Cmab 400mg/m 2 day 1,250mg/m 2 day 8,15)による PCE 療法 を開始した。X 年 9 月 22 日に嘔吐,倦怠感,冷汗を認め救 急外来受診された。 受診時所見:意識清明,脈拍 145 回 / 分,血圧 111/94 mmHg,SpO2 100%(室内気),体温 36.7℃,呼吸音清,心 音整,明らかな心雑音なし,腹部平坦軟,末梢冷感あり 血液検査所見:WBC 10,300/μL,BUN 26mg/dL,Cr 1.47mg/dL,eGFR 40mL/min,CRP 8.56mg/dL,トロポニ ン I 952pg/dL(<26),BNP 160.1pg/mL(<18.4),CK-MB 5 ng/mL(<5)そのほかには特記すべき所見は認めなかった。 心電図:脈拍 141/min,洞性頻脈。急性冠症候群を疑 う所見は認めなかった。 心エコー:前壁中隔壁運動低下,右心房拡張障害あり, 心嚢液貯留あり,心内血栓なし,左室駆出率(left ven tricular ejection fraction:LVEF):40%。 頸胸腹部 CT:心嚢液の貯留を認める。心膜はやや肥厚が みられる。そのほか特記所見なし。 経過:心嚢液貯留とトロポニン高値から,循環器内科 にコンサルトのうえで irAE による心膜炎疑いの診断で入 院加療の上,プレドニン 60mg を投与した。しかし入院 6 時間後で脈拍 200 台まで上昇し,眼球上転や痙攣がみら れた。トロポニン I は 1,313pg/dL とさらに上昇し,心臓 超音波検査ではびまん性に壁運動が低下し LVEF も 25% に低下していたため,irAE による心筋炎疑いとしてソル メドロール 1,000mg によるステロイドパルス療法を開始 した。ソルメドロール 1,000mg を計 3 日間投与すると全 身状態は改善がみられた。その後はプレドニン 60mg を 5 日程度ずつで漸減投与した。第 15 病日のトロポニン I は 783pg/dL と改善し,第 19 病日からはプレドニン 30mg の内服とした。内服スイッチ後も全身状態は良好で変化な く,第 21 病日で EF は 63%と改善がみられていたため, 第 22 病日での退院とした(図 1)。 退院後は外来でプレドニン内服漸減投与を行い,ICI を含 め,すべての化学療法は中止する方針とした。X年 12 月 5 日に CT を撮像すると,原発部位,リンパ節,仙骨の転移 病変すべてで以前のものと比べて縮小傾向であった。X+1 年 2 月 21 日の CT でもそれらの病変は縮小したまま維持さ れていた(図 2)。 考 察 担癌状態では,癌細胞に発現する PD-L1 と T 細胞に発 現する PD-1 が結合することによって T 細胞の活性化が阻 害され,アポトーシスが誘導される。ICI はこれらの PD L1,PD-1 に対して作用し,T 細胞を活性化させることで癌 の治療を行う薬剤である。活性化した T 細胞が IL-21 を産 生し,それによりB細胞から CXCL13 の発現を惹起する。 この CXCL13 が臓器傷害に寄与することで irAE を生じる 原因の一つとして報告されている 1)。 このような機序で irAE は発生するため,内分泌疾患, 皮膚疾患,消化器疾患など irAE の症状は多岐にわたる。 irAE は通常 ICI 投与開始後数週間~数ヶ月で出現するこ とが多いが,2 年以上経過してから出現した報告もある 2)。 そのなかで,致死的なものは早期に出現することが多く, 劇症型の心筋症は大半 6 週間以内で生じる 3)。 SITC のガイドラインによると,ICI 投与前の心血管系 の評価として推奨されているのは AST,ALT,CK など の血液検査のみである。ICI 投与前の心電図やトロポニン 測定の評価は,心疾患や糖尿病の既往がある場合やイピリ ムマブとニボルマブを併用する場合などの心筋炎発症リス クが高い場合には検討される 4)。ASCO のガイドラインに おいても,ICI 投与前の心電図やトロポニン測定の有効性 に関して明確なエビデンスはないとされている 5)。ICI 投 与中の心血管系のモニタリングに関しても推奨はなく,症 状に応じて検査を行う。 irAE の心筋症は irAE の中で発生率はそこまで高くな いものの,最も致死率が高く,50%を超えるとされてい る 6)。症状としては倦怠感,発熱,動悸,呼吸困難,浮 腫,失神など様々であり,非特異的な症状が多い。そのた め ICI による治療歴を考慮し,irAE の可能性を常に考え ていないと鑑別に挙げて診断に結び付けるのは難しい。急 性心筋炎が生じた際の劇症化を含めた予後予測は難しいた め,治療経過の中で繰り返し心機能や血管動態を評価する ことが重要である 7,8)。 日本循環器学会の心筋炎のガイドライン 8)によると, irAE の心筋症の確定診断は心筋生検による病理学的診断 であるが,検査するまでの簡便さと侵襲性を考えると実 臨床において有用かは議論が分かれるところである。そ れに関する確たるエビデンスはなく,同ガイドライン上 も irAE による急性心筋炎が疑われる場合の心筋生検の考 慮することは弱い推奨となっている。心筋生検での確定診 断が得られない場合は,心筋トロポニン値上昇に加えて心 臓 MRI で 2018 年改訂版 Lake Louise Criteria を満たすと ペムブロリズマブ投与によってirAE心筋炎をきたした上咽頭癌の一例 21 図 2 CT 水平断 a:irAE 発生前(X 年 8 月)の原発巣 b:irAE 発生 7 ヶ月後(X+1 年 2 月)の原発巣 c:irAE 発生前(X 年 8 月)の頸部リンパ節転移 d:irAE 発生 7 ヶ月後(X+1 年 2 月)の頸部リンパ節転移 図 1 入院後の経過 22 頭頸部癌 51(1):19—23,2025 白 取 竣ほか: きに臨床的に心筋炎と診断する。もしくは心筋トロポニン 値上昇に加えて,①心筋炎を示唆する症状・症候 ②心室 性不整脈,心停止,新規の伝導障害の出現 ③新規に出現 した局所や全体の壁運動低下 ④特に筋炎や重症筋無力症 の合併 ⑤心臓 MRI で 2018 年改訂版 Lake Louise Criteria をすべては満たさないが心筋炎を示唆する所見の①~⑤の うちの 2 項目以上該当する場合に診断とする 8)。本症例で は,心筋生検も心臓 MRI も行っていないが,心筋トロポ ニン上昇に加えて①と③を満たしていた。心エコーも診断 の一助にはなるものの,半数以上で正常だったとの報告も ある 9,10)。MRI など施行する時間もなく切迫した症例など では,トロポニン測定と心電図で所見を判断してすぐに治 療を始めるべきであると考えられる 7)。治療として前向き 試験は存在しないものの,ステロイドパルス療法をなるべ く早期に開始することが予後改善につながることは示され ている。既報でも診断遅延によってステロイド投与まで時 間がかかった例やステロイド投与量が少ない例では死亡し ている 11-13)。ASCO のガイドライン上ではグレードごとの 推奨が定められており,グレード 1 では ICI を中止した上 で 6 時間後のトロポニン測定し,正常化した場合は ICI が 原因でないと判断したのみ治療再開も検討してもよい。グ レード 2 以上では ICI を完全に中止し,診断後 24 時間以 内に 1-2 mg/kg/ 日の高用量プレドニゾロンを経口または 静脈内で投与するべきである。高用量プレドニゾロンに も反応がみられなかった場合は,メチルプレドニゾロン 1 g/ 日によるステロイドパルス療法を施行し,インフリ キシマブ,抗胸腺グロブリン,ミコフェノール酸モフェチ ルなどの免疫抑制剤を併用することも検討する。グレード 4 の場合はそれに加えてさらなる免疫抑制としてアバタセ プト(T 細胞選択的共刺激調節剤),アレムツズマブ(抗 CD52 交代)の投与を検討する 5)。 本症例ではペムブロリズマブの最初の投与から 1 年後, 最終投与から 2 ヶ月後に発症し救急搬送された。症状と しても嘔吐,倦怠感,冷汗などの非特異的な症状のみで あったが,精査のために撮像した頸胸腹部の CT で心嚢水 貯留がみつかり,irAE による心膜炎・心筋炎を疑うこと ができた。心電図では頻脈がみられる程度であり,心エ コーでも LVEF は 40%程度とやや低値ではあったものの 以前との比較はできず,これらは診断にはあまり寄与しな かった。入院 6 時間後に急変し,さらなる頻脈とトロポニ ン I の上昇,心エコーで LVEF が 25%とさらなる低下を きたしたことから,心筋生検による確定診断や心臓 MRI は行っていないものの臨床的に irAE 心筋炎であると診断 し,ステロイドパルス療法を施行した。その結果,症状の 改善がみられ,トロポニン I も徐々に減少していった。本 症例の状況から考えると,今回の症状が PCE 療法の副作 用である可能性も否定はできないものの,頭頸部癌領域で の PCE 療法による心筋炎の報告はない。パクリタキセル に心毒性はあるものの,報告されているのは心筋梗塞であ り,免疫チェックポイント阻害薬と併用せずに心筋炎が生 じたという報告はない。結果としてステロイドパルス療法 で症状改善がみられたことからも,本症例は irAE の心筋 炎によるものだったと考えられる。 癌腫に関わらず,irAE と ICI による抗腫瘍効果の関連 性については数多く報告されており,頭頸部扁平上皮癌に おいても irAE が発生した群は irAE が発生しなかった群 と比較して奏効割合は有意に高く,無増悪生存期間と全生 存期間においても有意に長いことが示されている 14)。irAE 発症後の ICI 再開に関しては議論が分かれるところであ る。非小細胞肺癌患者で ICI 治療中断を必要とする重症の irAE が生じた群のうち,irAE 発症以前に腫瘍縮小が得ら れていなかった患者では,ICI を再開すると有意に無増悪 生存期率,全生存率が延長するという報告がある。しかし ながら同報告では,重症 irAE が生じた例で ICI が再開さ れた場合には同様の irAE の再発もしくは異なる irAE の 新規出現が合わせて 50%を超える割合で生じることも報告 されている 15)。また,NCCN ガイドラインでは Grade 2-4 の心筋炎が生じた場合には,ICI の永続的な中止が推奨さ れている 16)。そのため心筋炎以外の irAE では発症前後の 腫瘍の状態も評価した上でリスクベネフィットを考慮して 再開は検討されるものの,本症例のような致死的な心筋炎 においては ICI の再投与は敬遠されるべきである。 本症例では,生命を脅かす Grade 4 の心筋炎であり, irAE 発生後はその他の化学療法を含めすべての治療を 行っていないものの,原発巣・転移巣は全て縮小を維持し ている。 結 語 ペムブロリズマブ投与後に非特異的な症状により発症し た irAE 心筋症に対して迅速にステロイドパルス療法を施 行し救命できた一例を経験した。また,抗腫瘍効果として も良好な予後が得られている。 免疫チェックポイント阻害薬を一度でも使用した際は, 数年後であったとしても常に irAE が発生しうることを念 頭におき,早期に治療を開始する必要がある。 著者は申告すべき利益相反を有しない。 文 献 1) Tsukamoto H., Komohara Y., Tomita Y., et al: Aging-asso ciated and CD4 T-cell-dependent ectopic CXCL13activation predisposes to anti-PD-1 therapy-inducedadverse events. Proc Natl Acad Sci USA 119:e2205378119, 2022 2) Couey M.A., Bell R.B., Patel A.A., et al: Delayed immune related events (DIRE) after discontinuation of immuno therapy: diagnostic hazard of autoimmunity at a distance. J Immunother Cancer 7:165, 2019 3) Moslehi J.J., Salem J.E., Sosman J.A., et al: Increased report ing of fatal immune checkpoint inhibitor-associated myocar ditis. Lancet 391:933, 2018 4) Brahmer J.R., Abu-Sbeih H., Ascierto P.A., et al: Society for Immunotherapy of Cancer (SITC) clinical practice guide line on immune checkpoint inhibitor-related adverse events. J Immunother Cancer 9:e002435, 2021 ペムブロリズマブ投与によってirAE心筋炎をきたした上咽頭癌の一例 23 5) Schneider B.J., Naidoo J., Santomasso B.D., et al: Manage ment of Immune-Related Adverse Events in Patients Treat ed With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol 39:4073-4126, 2021 6) Raschi E., Gatti M., Gelsomino F., et al: Lessons to be Learnt from Real-World Studies on Immune-Related Adverse Events with Checkpoint Inhibitors: A Clinical Perspective from Pharmacovigilance. Target Oncol 15:449-466, 2020 7) Kociol R.D., Cooper L.T., Fang J.C., et al: Recognition and initial management of fulminant myocarditis: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation 141:e69-e92, 2020 8) Nagai T., Inomata T., Kohno T., et al: JCS 2023 Guideline on Diagnosis and Treatment of Myocarditis. Circ J 87:674- 754, 2023 9) Mahmood S.S., Fradley M.G., Cohen J.V., et al: Myocarditis in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitors. J Am Coll Cardiol 71:1755-1764, 2018 10) Michel L., Rassaf T., Totzeck M.: Cardiotoxicity from im mune checkpoint inhibitors. Int J Cardiol Heart Vasc 25: 100420, 2019 11) Johnson D.B., Balko J.M., Compton M.L., et al: Fulminant Myocarditis with Combination Immune
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