Case series shows complete pathological response despite persistent mucosal pigmentation in sinonasal mucosal melanoma after immunoradiotherapy, highlighting diagnostic challenges in salvage surgery.
Transnasal endoscopic surgery for sinonasal mucosal melanoma is considered to be minimally invasive and has outcomes comparable to those of open surgery. We performed transnasal endoscopic surgery for salvage in two patients with suspected residual tumor after initial treatment with immunoradiotherapy. In both cases, postoperative pathology showed no tumor and nivolumab was continued postoperatively. Case 1 remained recurrence-free after nivolumab was discontinued one year later, but Case 2 developed a recurrence in clivus and was treated palliatively. The presence of pigmentation or a mass does not always indicate residual tumor, and in some cases it is difficult to determine residual tumor after immunoradiotherapy. Although there have been no reports on transnasal endoscopic surgery after immunoradiotherapy, salvage surgery is one of the few options for additional treatment in BRAF mutation-negative cases. Pathological response after neoadjuvant ICI therapy is considered an important prognostic indicator, and the indication for salvage surgery should be deter mined after considering its significance and risks. Key words:Sinonasal mucosal melanoma, Transnasal endoscopic surgery, Immunoradiotherapy [Received Mar. 4, 2025, Accepted Jun. 24, 2025] はじめに 鼻副鼻腔粘膜悪性黒色腫は,悪性黒色腫全体の約 1%を 占める稀な腫瘍である 1)。頭頸部の粘膜悪性黒色腫は鼻副 鼻腔に最も高頻度に認められるが,進行した状態で発見さ れることが多く予後は不良である。経鼻内視鏡手術は低 侵襲かつ,外切開手術と治療成績が同等とされており 2,3), 当施設では積極的に経鼻内視鏡での切除術を行っている。 1) 京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2) 京都大学大学院医学研究科腫瘍内科 [令和 7 年 3 月 4 日受付,令和 7 年 6 月 24 日受理] 別刷請求先: 〒 606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町 54 京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科 北田 有史 近年,免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor,ICI)の出現により悪性黒色腫の治療法は大き く変化しつつあるが,皮膚と異なり充分な切除マージンを 取ることが困難な鼻副鼻腔粘膜悪性黒色腫では,症例ごと に治療方針の検討を必要とする場合がある。粘膜悪性黒色 腫に対する治療の選択肢として,当施設を含む多施設臨床 試験で粘膜悪性黒色腫に対して ICI と放射線治療を併用し た免疫放射線治療の有効性を評価している 4)。今回,鼻副 鼻腔粘膜悪性黒色腫に対し免疫放射線治療を行った後に腫 瘍が遺残したと考えられた 2 症例について,経鼻内視鏡で のサルベージ手術を行った。免疫放射線治療後の鼻副鼻腔 粘膜悪性黒色腫に対する経鼻内視鏡手術の報告はこれまで に無く,その意義につき考察する。 症 例 1 77 歳,男性。 主訴:鼻出血。 既往歴:心房細動。 内服:イグザレルト,ビソプロロールフマル酸,ベザ フィブラート。 現病歴:反復性の右鼻出血が 4 ヶ月程度続くことから近 医耳鼻咽喉科を受診し,右鼻内に黒色腫瘍を指摘されたた め,精査目的に当院に紹介された。 身体所見:鼻鏡検査で右鼻腔を占拠する黒色腫瘍を認め た。頸部リンパ節の腫脹は触れなかった。 画像検査所見:副鼻腔単純 CT では右鼻副鼻腔を占拠す る軟部影が見られ,鼻中隔の上部で左嗅裂まで進展してい た。右上顎骨の皮質は一部不明瞭化し,上顎骨への浸潤も 疑われた(図 1A)。副鼻腔単純 MRI では,T2 強調画像 で低信号主体のモザイク状腫瘤を認めた(図 1B)。 経過: 外来で生検を行い悪性黒色腫と判明した。BRAF(B-Raf proto-oncogene, serine/threonine kinase)遺伝子変異は 陰性であった。PET-CT では局所に FDG 高集積を認めた (図 1C)が転移は無く,cT4aN0M0(UICC/AJCC 分類, 第 8 版)と診断した。両側の嗅裂に進展しており,手術の 場合は嗅裂天蓋からの髄液漏を来たす可能性が想定された が,両側鼻中隔粘膜に進展しているため有茎粘膜弁を用い づらいことから,頭蓋底再建には開頭や顎顔面切開を伴う 高侵襲の拡大手術を要すると考えられた。本症例において は,初回治療としてニボルマブを用いた免疫放射線治療を 行う方針とした。 鼻副鼻腔に放射線を 48Gy/12fraction(fr)照射し,同 時期よりニボルマブ(480mg/body,4 週毎投与)を開始 した。免疫放射線治療後約 2 ヶ月で撮像した CT では軟部 影は縮小したが,MRI の T2 強調画像で低信号腫瘤が遺 残し,PET-CT では FDG 集積は減弱するも残存していた (図 2)。鼻腔内視鏡検査では右中鼻道に黒色腫瘤が遺残し ており,上鼻甲介や嗅裂粘膜にも黒色部が見られた(図 3)。生検は陰性であったが悪性黒色腫が遺残している可能 性が高いと判断し,サルベージ目的に経鼻内視鏡下鼻副鼻 腔腫瘍摘出術を行った。 手術所見: 黒色腫瘍は右上顎洞~篩骨洞~嗅裂を主座として存在 し,鼻中隔後上方で左嗅裂へと貫通していた。右鼻腔は腫 瘍より充分な安全域を付けるために鼻中隔の皮膚粘膜移行 部より切開を行い,鼻中隔粘膜を剥離した。外側は下鼻 甲介の前方より粘膜を切開し,Endoscopic medial maxil lectomy を行って上顎洞粘膜を外側壁の一部のみ残して摘 出した。鼻涙管後方に接する粘膜に黒色部を認めており, 涙嚢の内側壁を鼻涙管と共に合併切除した。右 Draf type Ⅱb を行い,前頭洞自然口に色素沈着を認めたため前頭洞 粘膜は全摘出した。篩骨洞は前頭蓋底と眼窩内側壁に沿っ て骨膜下で粘膜を剥離した。右嗅裂には黒色部が認められ たが,髄液漏を来たさぬよう篩板から数 mm 程度下方で 粘膜を切断して一部温存した。左鼻腔は篩骨洞粘膜を剥離 し,嗅裂粘膜は同様に篩板から数 mm 下方で切除して一 塊に腫瘍を摘出した。 術後経過: 術後 3 日目より鼻洗浄を開始し,術前に中止した抗凝固 図 1 A:副鼻腔単純 CT(冠状断) 右鼻副鼻腔を軟部影が占拠し,左嗅裂にまで進展している。 B:副鼻腔単純 MRI(T2 強調画像) 右鼻副鼻腔に低信号主体のモザイク状の腫瘤を認める。 C:PET-CT 右副鼻腔に FDG の高集積を認める。 薬は術後 4 日目より再開した。病理組織診では多数のメラ ノファージの浸潤が見られたが黒色腫の遺残は認めなかっ た。pCR(pathological complete response)と判断し,術 後よりニボルマブの投与を 1 年間継続したのちに終了した が,術後約 2 年を経過した時点でも再発を認めていない。 症 例 2 73 歳,男性。 主訴:右鼻閉。 既往歴: 脳動脈瘤,カテーテル治療後。 声帯ポリープ,切除術後。 内服:エチゾラム,タムスロシン,アテディオ,ユリス。 現病歴:約 1 ヶ月前から右鼻閉を自覚し近医を受診。副 鼻腔 CT で骨破壊性の右鼻副鼻腔病変を認め,生検で悪性 黒色腫と診断されたため,当院に紹介された。 身体所見:鼻鏡検査で右鼻腔を占拠する黒色腫瘍を認め た。頸部リンパ節の腫脹は触れなかった。 画像検査所見:副鼻腔造影 CT で造影効果を呈する軟 部影が右鼻副鼻腔を占拠し,MRI の T2 強調画像でも一 致する低信号の病変を認め,眼窩,頭蓋底へと骨破壊性 に進展していた(図 4)。PET-CT で転移病変は認めず, cT4bN0M0(UICC/AJCC 分類,第 8 版)と診断した。 経過: 当科外来で再生検を行い,BRAF 遺伝子変異を確認し たが陰性であった。初回治療としてニボルマブを用いた免 疫放射線治療(48Gy/12fr)を行った。腫瘍は著明縮小を 認め,副鼻腔造影 CT で篩骨洞,蝶形骨洞に軟部影が残存 していたが造影効果は消失しており,PET-CT での集積も 見られなくなっていた(図 5A-C)。しかし嗅裂に黒色色 素が沈着しており(図 5D),上鼻道より淡褐色腫瘤を認め たため生検を行うも悪性所見は見られなかった。画像上は 明らかでは無いが,肉眼所見により腫瘍が遺残している可 能性は否定できないこと,一方,病変の全摘出は頭蓋内合 併症のリスクが高くなるため,サルベージ手術を行う場合 は亜全摘にとどまることなどを説明の上,今後の治療方針 について,手術を行うか,ニボルマブを投与する現行加療 図 3 鼻腔内視鏡所見 A:右鼻腔 B:左鼻腔 免疫放射線治療後も,黒色の鼻副鼻腔腫瘤が遺残していた。 図 2 A:副鼻腔造影 CT(冠状断) 右鼻副鼻腔の軟部影は縮小。 B: 副鼻腔単純 MRI(T2 強調画像) 右上顎洞に低信号腫瘤を認め,篩骨洞に低~等信号の腫瘤が一部に残存 している。 C:PET-CT FDG の集積は減弱するも残存。 を継続するか相談した。手術を希望されたため,経鼻内視 鏡下に右鼻副鼻腔腫瘍摘出術を行う方針となった。 手術所見 右鼻内を観察し,上鼻道に黒色腫瘤を認めた。皮膚粘 膜移行部で右側鼻中隔粘膜を切開し軟骨膜下で剥離した。 Endoscopic medial maxillectomy を行い,鼻涙管は合併切 除し,右上顎洞の内側半分の粘膜を摘出側に含めた。Draf type Ⅱb を行い,右前頭洞粘膜を全摘出した。眼窩内側 図 5 A,B:副鼻腔造影 CT(冠状断) C:PET-CT D:鼻腔内視鏡(右鼻腔) A: 篩骨洞や蝶形骨洞に軟部影が残っているが,造影効果は消失。篩板の外側 壁に骨欠損を認める。 B:蝶形骨洞天蓋と眼窩内側壁の骨欠損を認める。 C:副鼻腔に FDG の高集積は認めない。 D:嗅裂後方や上鼻甲介に黒色色素が沈着している。 図 4 A: 副鼻腔造影 CT(冠状断) 右篩骨洞を中心に造影効果を伴う占拠性病変を認め, 頭蓋底,眼窩内,左嗅裂に進展している。 B: 副鼻腔単純 MRI(T2 強調画像) CT の造影病変に一致して,低信号の腫瘤を 認める。 壁は一部で骨欠損を認めたが,眼窩骨膜は保たれていたた め,粘膜を剥離し眼窩骨膜は温存した。嗅裂粘膜は篩板か ら数 mm 離して切除した。篩板の外側壁の骨が欠損して おり,髄液漏を来さぬよう硬膜から粘膜を剥離した(図 6A)が,一部では癒着していたため粘膜を切除しなかっ た。右蝶形骨洞天蓋でも骨欠損部を認め粘膜が癒着してお り,粘膜を切除しなかった(図 6B)。黒色腫瘤と共に鼻副 鼻腔粘膜を一塊に摘出した。 術後経過 術後 3 日目より鼻洗浄を開始した。病理組織診ではメラ ノファージの集簇巣が散見されたが,悪性黒色腫の遺残は 認めなかった。本症例も術後に引き続きニボルマブの投与 を 4 ヶ月間継続した。手術より約 1 ヶ月後から側頭部~後 頭部の頑固な疼痛を訴えるようになり,採血で CRP が上 昇していたため,骨髄炎を疑い抗生剤を変更したが症状は 改善しなかった。さらに頭部造影 CT,造影 MRI で精査 を行ったが,再発や癌性髄膜炎の所見は認めず,疼痛コン トロールのため麻薬性鎮痛剤を導入した。術後約 4 ヶ月目 から食事の際に嚥下困難感や誤嚥が見られるようになり, 喉頭内視鏡で右声帯麻痺と右側咽喉頭の知覚低下が認めら れた。頭部造影 CT を再度撮影すると,下部斜台の皮質骨 に溶骨性変化を生じ,斜台~右頸静脈孔に淡く造影される 病変が新たに出現しており,PET-CT では同部位に高度の 集積が見られた(図 7)ことから,頭蓋底再発による下位 脳神経麻痺と診断した。その後は緩和加療主体の治療に切 り替え,術後約 6 ヶ月目にホスピスへ転院した。 考 察 頭頸部に発生する粘膜悪性黒色腫は,粘膜黒色腫全体の 10%未満を占める。部位としては,鼻腔に 55%,副鼻腔 に 15%,口腔に 25%の割合で発生する 5-7)。このように頭 頸部の粘膜黒色腫としては鼻副鼻腔原発が最多であるが, 皮膚も含めた悪性黒色腫全体では約 1%を占めるに過ぎな い。従って,鼻副鼻腔粘膜悪性黒色腫の治療方針は,皮膚 も含めた悪性黒色腫の方針に則り概ね決定される。 遠隔転移を認めない悪性黒色腫では,完全な外科的切除 図 6 術中所見 A:篩板外側壁の骨欠損部より粘膜を剥離し,硬膜が露出(※で示す部位)。 B:蝶形骨洞天蓋の骨欠損部の粘膜を一部温存した(黒点線)。 図 7 A: 副鼻腔造影 CT(水平断) 斜台部右側の骨皮質に溶骨性変化が見られ,頸静脈 孔にかけて淡く造影効果を伴う病変が出現している(黒点線)。 B:PET-CT CT の造影病変に一致して FDG の高集積を認める。 が可能なら手術が治療の根幹に位置付けられ,ICI の出現 により加療方針が変わりつつある中でも依然として重要で ある。しかし手術における切除マージンの推奨を決める 試験は殆どが体幹や四肢の悪性黒色腫で占められている。 NCCN 及び AAD ガイドラインでは,局所進行性の悪性 黒色腫に対し 2 cm 以上の切除マージンを取ることを推奨 しているが,頭頸部,特に鼻副鼻腔原発の症例では整容面 や重要臓器が隣接するなどの解剖学的制約から,このよう な基準に沿うことは困難な症例が多い。悪性黒色腫の術後 放射線治療については,OS(Overall survivial)を向上し ない可能性があるが,局所再発率を低下させるとされてお り 8,9),当院では鼻副鼻腔症例においては原則的に術後照 射を追加する方針としている。 近年,ICI の出現により悪性黒色腫の治療方針は様変わ りしている。手術と関連した ICI の使用について,Check mate 238 試験では術後補助療法としてニボルマブ群とイ ピリムマブ群を比較評価しており,ニボルマブ群で RFS (Relapse-free survival)が有意に良好であった 10)。また Checkmate 915 試験ではニボルマブとイピリムマブの併 用群とニボルマブ単剤群とを比較したが,RFS に有意な 差を認めず,一方有害事象面においてはニボルマブ単剤群 が優れていた 11)。これらのことから,当院では術後治療と して放射線照射とニボルマブの投与をそれぞれ行ってお り,再発を認めない場合はニボルマブの投与を術後 1 年間 継続している。さらに,新たに報告された SWOG S1801 試験では,切除可能なⅢ,Ⅳ期の悪性黒色腫において,ペ ンブロリズマブを術前後で投与した群で術後のみ投与し た群よりも EFS(Event-free survival)が改善するとされ た 12)。そのため,今後当院で加療を行う症例においてもこ れまでと治療方針が変わってくる可能性がある。また,鼻 副鼻腔悪性黒色腫での頸部リンパ節転移率は 10 ~ 17%に とどまり 13,14),肉眼的転移を認めない例では頸部は予防的 郭清を行わずサーベイランスが推奨される。第Ⅱ層試験で はあるが,肉眼的リンパ節転移を有する切除可能なⅢ期 の悪性黒色腫に関して,術前にニボルマブとイピリムマ ブを併用し術後にニボルマブを投与した群と,術後のニ ボルマブ投与のみを行った群で,前者の EFS が有意に優 れるという結果が得られている 15)。また BRAF 遺伝子変 異が陽性の悪性黒色腫においては,BRAF 阻害剤や MEK (Mitogen-activated extracellular signal-regulated kinase) 阻害剤の投与も有用な選択肢となる 16)。しかし,悪性黒色 腫において免疫療法の有効性を示す試験の殆どは皮膚悪性 黒色腫が主体となっており,粘膜悪性黒色腫を含むものは 少数であるため皮膚悪性黒色腫の加療方針に倣う傾向があ る。また,皮膚悪性黒色腫と粘膜悪性黒色腫では BRAF や NRAS,KIT などの遺伝子の変異頻度が異なっている ことが報告されており,その性質の違いを指摘する意見も ある 17)。その中でも,制御率の向上を目指し粘膜悪性黒色 腫に対して ICI と放射線治療を併用した免疫放射線治療の 成績が複数報告されている 18,19)。当院での免疫放射線治療 例に対する後方視的検討でも,ニボルマブと放射線治療の 併用により放射線照射野内において全例に奏功を認めるな ど,局所制御に対する有効性が見られたため 20),多施設で の第Ⅱ層試験によるニボルマブを用いた免疫放射線治療の 有効性と安全性の評価を行っている 4)。 当科における鼻副鼻腔悪性黒色腫の手術方針として,鼻 副鼻腔内にとどまる場合は主に経鼻内視鏡手術を行ってお り,眼窩や皮下などの鼻副鼻腔外に進展した場合は顔面切 開などを追加している。経鼻内視鏡手術は外切開手術と比 較して審美面に優れ低侵襲だが,治療成績は外切開手術と 同等であることがメタアナリシスにより示されている 2,3)。 一方,鼻副鼻腔粘膜悪性黒色腫において,可能な限りの切 除マージンを確保するために眼窩や頭蓋底の拡大切除を行 うかについては,局所制御が生存率の強い予後予測因子で は無いことや,病理断端陰性が真の意味での完全切除とは 限らないことから,適応を慎重に判断すべきとする意見も ある 17,21)。頭蓋内に進展した場合や,他の理由で初回治療 で手術を行うことが不適当と判断した場合の当院での治療 方針は定まっていないが,免疫放射線治療を初回治療の選 択肢としている。悪性黒色腫は一般に放射線抵抗性だが, 当施設を含む多施設での臨床試験において,ニボルマブと 放射線の併用療法が粘膜悪性黒色腫の奏功率を改善する可 能性が示されている 4)。鼻副鼻腔悪性黒色腫では広範な粘 膜切除を要することが多いが,嗅裂天蓋の粘膜を切除した 場合には,嗅糸の篩板通過部より髄液漏を来す可能性があ るため,頭蓋底再建の準備が必要である。有茎粘膜弁の登 場により鼻内視鏡手術時の頭蓋底再建の成功率は向上して いる 22)。嗅裂部の再建に用いる有茎粘膜弁には,前篩骨動 脈や後篩骨動脈の枝を栄養血管とし,対側の鼻中隔粘膜を 上方茎として用いた粘膜弁である septal flip flap を主に選 択している 23)。もし悪性黒色腫が健側の鼻中隔粘膜に進展 していた場合は,septal flip flap を始めとした有茎粘膜弁 による再建が困難となるため,この場合も免疫放射線治療 を選択している。ただし粘膜悪性黒色腫の特性として局所 においても多巣性に粘膜病変が存在することがあるため 24), 術前に健側の粘膜が再建に使用可能か入念に評価しておく 必要がある。 今回提示した症例は,いずれも免疫放射線治療後に悪性 黒色腫が遺残している可能性が疑われた症例であった。初 回治療で手術を選択した症例と異なる点として,有茎粘膜 弁が使用困難な範囲まで腫瘍が進展していた症例であるこ と,そして放射線を既に照射されているため,頭蓋底再建 の成功率が低下する可能性があることなどが問題であっ た。重要な構造物に近接している鼻副鼻腔悪性腫瘍に関し て十分な切除マージンを確保することは困難だが,当科 の普段の経鼻内視鏡手術で心がけていることは,1 つ目は 10mm 以上の水平の粘膜切除断端を確保することである。 2 つ目は腫瘍が浸潤している組織層よりも 1 層深い組織を 切除することで,例えば粘膜まで腫瘍が浸潤している場合 には下層の骨も切除するようにしている。しかし,提示し た 2 症例では前述したようなマージンで切除を
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